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GPL は独禁法違反となるのか
[- 神か悪魔か - GNU の見えざる手 : 目次]
この記事は、「神か悪魔か - GNU の見えざる手」の一部です。他のエントリとあわせてお読みください。


 先のエントリ - GPL v3 (対特許ウィルス) に、 yukoba さんよりコメントをいただいた。
MicrosoftのWindowsに「購入者はいかなる特許裁判をマイクロソフトに対して行ってはいけない」という条項が入っていたらもっとびっくりですね。
 マイクロソフトは購入者ではなく OEM に対して特許の無償ライセンスを要求していて、それに対して公取から排除勧告を受けている。 (ソース)

 僕が気になるのは、 GPL に特許の無償相互ライセンスを要求する条項が盛り込まれた場合、それがカルテルと見なされるかどうかである。

 GPL v2 以前でも、改変の公開を強要する文言はあった。しかし、公開対象となるのはソフトそのものに対する改変であって、ソフトの生成物 (コンパイルされたオブジェクトコード等) については GPL の適用範囲外である。
 対特許条項は、改変の共有とは本質的に異なる性質を持つ。ソフトウェアの改変権ではなく使用権を制限するものだからだ。

16:20 追記:
 GNU General Public License (GPL; リンク) は、多くのオープンソースソフトウェアで採用されている使用許諾契約です。
 GPL に基づいて配布されている代表的なソフトウェアとしては、 Linux や GCC (コンパイラ=人間が書いたプログラムを実行可能な形式に変換するソフト) が挙げられます。特に GCC は、しばしば non-PC 機器用のコンパイラとしてカスタマイズされて使用されています。また、一からコンパイラを開発するのは大変なので、多くの non-PC プラットフォームにおいて GCC が唯一のコンパイラとなっています。換言すると、多くの non-PC プラットフォームにおいては、(必須ソフトウェアである) GCC の代替手段は存在しません。
 したがって、GPL v3 に先のエントリで書いたような対特許条項が盛り込まれ、 GCC が GPL v3 に基づいて配布されるようになった場合、non-PC むけにソフトウェアの部品を販売している企業は (特許を用いて自社技術を保護できなくなるため) 壊滅的な影響を受ける可能性があります。

21:30 追記:
 例を挙げます。
 ACCESSMozilla を訴えたとたん GPL ソフトウェアの使用権を失うとします注1。ACCESS は Linux を搭載した携帯電話むけに NetFront をライセンスしているので、特許条項のもとに Linux がライセンスされるようになると注2 Mozilla を訴えることは不可能になります。

注1: 実際には Mozilla は GPL ソフトウェアではありません。
注2: GPL v3 は、まだ完成していませんし、完成したとして Linux が GPL v3 でリリースされるようになるかは別問題です。以下 2005/1/7 追記: Linux Kernel は GPL v2 (バージョンアップ条項なし) で配布されています。その理由については、Linus 自身の発言を翻訳しましたので、ご覧ください (リンク) 。ただ、 Linux Kernel が GPL v3 にならないからといって、周辺のライブラリのライセンスが GPL v3 にアップグレードしてしまえば、問題は変わらないでしょう。


2004/1/7 追記:
 法務だけど理系女子の綴るblog -mulog- 「GPLとか企業法務の意義とか」において、マイクロソフトの NAP 条項と同一の規制に抵触するであろうとの指摘がなされています。規制の条文も示されていてオススメです。
 (さらに追記) 規制の対象となる「拘束条件つき取引」に該当するかどうかついては、「個別の取引毎に判断される」という指摘をコメントでいただいています (ありがとうございます > t.ikawa さん)。 独禁法の問題にしぼって、さらに詳しく説明していただいていますので、あわせてご覧ください。
 また、僕 (当ブログの筆者) は、法律の専門知識を持ち合わせていません。この問題についてご懸念の方は、専門家に相談するようにしてください。

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by kazuhooku | 2005-01-04 16:13 | GNU
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