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特許条項の標的は誰なのか?
[- 神か悪魔か - GNU の見えざる手 : 目次]
この記事は、「神か悪魔か - GNU の見えざる手」の一部です。他のエントリとあわせてお読みください。


 先の記事「GPL は独禁法違反となるのか」で、 ACCESS を例にあげて組み込み系 ISV に対する影響を論じた。
 しかし、特許条項の標的はもっと大きい。狙いは Amazon, ebay, Google, Yahoo! といった、インターネットを代表する企業群にも定められている。
 これらの企業は、いずれも GPL ソフトウェアを使用して自社のサービスを築き挙げている。しかし、 GPL の規定では、社内使用目的に GPL ソフトウェアを改変しても、それを公開する必要はない。いわゆる「ASP ループホール」である。彼らに対しては、オープンソースにただ乗りしている「フリーライダー」だという批判があり、前回の GPL 改訂の企てはこれらの企業を対象にしたものだった。

 この点は、前回訳した Linus のメール、(2000 年当時の) 来るべき GPL v3 を紹介するNewsForge の記事 (ASP ループホールについても解説してあります) 、現在進行形の話題として Krzysztof Kowalczyk weblog の Google に対するフリーライダー批判「Google - we take it all, give nothing back.」あたりが面白いと思う。

 今回の GPL 改定は、前回と比較するとおとなしいように感じられる。eWeek の記事を見ても、知的財産権とソフトウェア特許に狙いをしぼっているということになっている。知財権にかかわる部分を修正するのは、SCO の問題があるからだ。SCO 対策なら、皆が賛成する。ソフトウェア特許といって普通イメージされるのは、Intertrust や Eolas の訴訟といったあたりである。これらの訴訟で原告を支持した人がいたか。あるいは、マイクロソフトが Linux の特許侵害の可能性について不安をあおったニュース。オープンソースとかかわりのあるほとんどの人は反発を覚えただろう。知財権問題・ソフトウェア特許には、ネガティブなイメージが定着している。

 そのためか、今回の改訂については前回ほどの騒ぎにはなっていない。

 しかし、影響はウェブ企業にも及ぶ。たとえば、今年、Google と Yahoo! の間で争われた特許訴訟の和解額は、3億ドル近くに上る (ITMedia の記事)。つけくわえておくなら、一般にウェブ企業はソフトウェア企業よりも特許の行使に熱心である。

 GNU は、あきらめていない。

2005/1/10 追記:

 Google vs. Yahoo! のような企業間の特許係争にどう影響が加わるのか、具体論が抜けていたので補足する。

 この場合の議論は、他社からの特許訴訟を避ける手段として GPL ソフトウェアの開発・拡張・公開が行われた場合、どうなるのか、というものである。

 他社から特許侵害で警告された場合に自社のソフトウェアを GPL 化して公開をするといったレベルでは、被告が勝訴することはないだろう。しかし、一見、利益関係のない第三者が特許技術を GPL 化した場合にはどうか。あるいは、GPL 化が特許の開示以前に行われていたら?

 こんなことも可能かもしれない。大手企業の将来有望な技術要素を見つけたら、とりあえず GPL ソフトとして公開しておく。実用的なレベルに達していない方がいいです。で、特許訴訟が起こってから、その GPL ソフトを大々的に拡張する。その際には、株の空売りを行う。

 GPL v3 が公開されるまで、正確な議論はできない。
 しかし、対特許条項の有効性と悪用の排除が、いかに両立の難しいものであるかは明らかにできていると思う。

 なお、繰り返しになりますが、僕は法律の専門家ではありません。詳しい影響については、専門家に相談することをお勧めします。

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by kazuhooku | 2005-01-07 23:55 | GNU
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