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ムーアの法則とウェブサービスへの投資予測
 多くのウェブサービスでは、時間の経過とともにデータ量が増えて行きます。それにともない、HDD やメモリの増設が必要になるわけですが、ではいったい、どの程度の投資が必要になるか、どう計算すればいいのでしょう。

 半導体業界の有名な経験則として「ムーアの法則」と呼ばれるものがあります。半導体の集積密度は18ヶ月〜2年で倍になる、というものです。メモリのバイト単価はこの法則に反比例注1、つまり18ヶ月〜2年で半額になる、と考えることができます。また、HDD の容量の拡大はより急速で、バイト単価は12ヶ月〜18ヶ月程度で半額になる、と考えればいいかと思います。

 というわけで、この指数関数の傾きが1になるところを求めることで、最大の設備投資が必要になる時期がわかります。あとは、その時期に必要となる記憶容量と予測単価 (これはやはり、ムーアの法則から算出することができます) から、その時期の投資額を算出することができます。これがサービスのランニングコストの最大値になります。

 以下は、いくつかのパターンについて実際に計算してみた値です。

 集積度倍増の期間 最大の投資が必要になる時期 同時期の予測単価(現在比)
     12ヶ月          6ヶ月後          0.71
     18ヶ月         20ヶ月後          0.46
     24ヶ月         36ヶ月後          0.35

 たとえば、搭載メモリ量が重要なサービスを開発しているとします。そして、1年後のメモリ必要量を16GBと予測していたとします。メモリの単価が24ヶ月で半減すると仮定すると、最大の投資が必要になるのは3年後だということが、上の表より分かります注2。3年後のメモリ必要量は、毎年1回投資するとした場合 16GB*(3+1)=6448GB です。そして、同時期の予測単価は現在比で0.35になっているので、最大の投資額は、現在の 64GB*0.35=22GB に相当する額ということがわかります。あれ、現在必要な投資額と大して変わりませんね。実はそうなんです。

 ウェブサービスは実際には、数ヶ月〜1年程度後の需要を見越して構築されます。つまり、ムーアの法則を加味すると、1年後の需要予測を満たすウェブサービスであり、以後2年間同程度(かちょっと上)の資本投下を行えるのであれば、時間の経過に伴うデータ量の増加は問題にならないのです。より半減期が短い HDD 容量が重要な場合だと、1年目さえ乗り切れれば、翌年以降の投資額は低減していくことになります。

 ウェブサービスを開発していると、時々、データサイズが時間とともに増えていくけど問題ないの?、と聞かれることがあります。そういった場合の答えとして、「重要なのはデータサイズではなく設備投資コストであり、ムーアの法則を加味するとうんぬん」という答えが成り立つよ、ということは、覚えておいて損はないのではないか、と思います。

追記: あるいは、こういうイケイケドンドンの投資予測が成り立ってしまうのが、ネット業界の面白さでもあるのだと思います。これが、他の業界との差異であり、また (他の業界の慣習に慣れた人から) 白眼視されがちな理由でもあるのかな、と思いました。

注1: チップの面積あたりの製造原価が変化せず、かつ市場原理が働いていれば、そうなります。
注2: メモリの増設ではなく機材の買い替えを前提としています。往々にしてそのほうが安かったりするので。

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by kazuhooku | 2007-10-13 11:01 | 雑想
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