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GPL バージョン変化の隠された意味
[- 神か悪魔か - GNU の見えざる手 : 目次]
この記事は、「神か悪魔か - GNU の見えざる手」の一部です。他のエントリとあわせてお読みください。


先の記事「GPL FAQ の説明は適切なのか」において、 GPL FAQ は、見た目と異なり、開発者個人の権利については一切論じていない、という点を指摘した。

 では、ライセンス条件変更を受け入れることができなかった各個の開発者は、どうすればよいのだろうか。開発プロジェクトをフォーク (分割) して、GPL2 時代のバージョンを改良し続ければよい、という意見はあるだろう。しかし、プロジェクトが「GPL バージョン 3 以降」に移行するのは、実際には移行によるデメリット (一部開発者離脱による開発力の低下) がメリット (移行賛成派にとって GPLv3 が GPLv2 より、どれほど優れているか) を上回る場合である。つまり、プロジェクトのライセンス条件変更が発生するのは、変更を受け入れることができない人々が少数派であった場合の話なのである。少数派がフォークしたとしても、改良の速度は、以前とは大幅に低下するだろう。極少数であった場合は、フォークした後のメンテナンスすら、可能かどうか怪しくなるかもしれない。
 このように、個々の開発者にとっては、「開発者は、そうしたければGPLの以前のバージョンに従った利用を許可し続けることができます」という主張は、常に成り立つとは限らないのである。

 また、バージョン変更の意味が周知の事実ではなく、その意味の理解を FSF が必須事項として要求していず、GPL FAQ の説明すら適切でないという前提において、「GPL2 時代のバージョンをそのまま使い続ければいいではないか」という主張も誤りなのではないか。たとえば、 GNU/Linux 向けに商用ソフトウェアを販売しているような個人あるいは企業にとっては、主流派の動作環境にアクセスするために GPL3 を受け入れない限り、ビジネスからの撤退が不可避である。報道によると、GPL3 では特許の不争条項が導入される可能性があるが、その場合、GPL3 は、これらの個人あるいは企業は、ソフトウェア特許の行使権放棄とビジネスの二者択一を迫ることになる。

 GPL のバージョンが変化する、ということには、このような問題も存在するのである。
by kazuhooku | 2005-01-31 12:08 | GNU
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