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kazuho.exblog.jp - 奥 一穂の飲んでから書くブログ。なにもかもアルコールのせいです
エイジ・オブ・アクセスと「学習の高速道路」について
一億円っていくら何でも安くね、というお話。

よく知られているとおり、レンタルCDなどに関しては、すでにJASRACが同様のことをやっている。その両立や再配分率などは議論の余地があるところもあるのだろうけど、少なくとも仕組みはすでにある。

なぜ同様のことを書籍でやってこなかったかが私にはむしろ不思議に思えるのだけど。

404 Blog Not Found:ブックオフが著作者に支払うべき金額

 そもそも貸与と譲渡をごちゃまぜにして論じている時点でどうかというのはさておき注1、ここでは本の貸与権について。

 書籍の貸与に課金するとなると、図書館はどうなるんでしょう? 誰もが無料で使える図書館、というものが (少なくとも建前としては) 知識が共有物であることを保障していたわけであり。所有からアクセス権を重視するように社会が変化してきているという現状認識注2にはあまり異論はないけれども、あらゆる知に課金しようなんて横暴にすぎると思う注3。そして、知識へのアクセスに対する課金は、機会均等性だけでなく、社会全体の生産性にも影響する。

 梅田望夫が何故インターネットを指して「学習の高速道路」と呼んだか、それは、インターネットによって、あふれんばかりの情報にユーザーが自由にアクセスし、取捨選択できるようになったから。そして、それがとても効率的だ、ということ。このように考えれば、知識へのアクセスに課金するという発想が、いかに後ろ向きなものかよくわかる。

 自分は、知識は人類全体の共有財産であって、著作料ってのは共有財産を増やすためのインセンティブに過ぎない、と考えるし、著作収入の最大化が自己目的化するのはおかしいんじゃないか注4

 そもそも、現状では BOOK OFF 側に支払い義務はないわけだし、金額が適正かどうか以前に、まず、なぜ支払うべきなのか (あるいは支払うべきでないのか) を論じてほしいと思った。

注1: 出版物貸与権管理センター - Wikipedia このへんも参照
注2: エイジ・オブ・アクセス—アクセスの時代
注3: 図書館へのフリーアクセスを制限しない形式であれば公共貸与権に対する補償はあってもいいんじゃないか (参照: 図書館と公共貸与権)
注4: 「オレは売文業者だからオレの書くものには娯楽以上の価値は一ミリもありませんから」って言うなら話は別かもね☆

# by kazuhooku | 2008-04-04 15:40 | 雑想
BOOK OFF が今、1億円を払う理由
 以下、下衆の勘ぐり。

 著作者団体の主張には法的根拠はないし、だからこそ受け取り方法が問題になるわけであり。となると、そもそも払ういわれのないお金を、なぜ、今、払うのか、ということになる。

 論理的な帰結としては、BOOK OFF 側が「このままいくと著作権法が改正されて、古本売買にも著作料が課せられるようになるかもしれない」という感触を得たんじゃないか、ということになる。そして、現実的脅威になったからこそ実弾を打って問題を (少なくとも) 先延ばしにしようとしているんじゃないか。

 どうなんでしょうね。
# by kazuhooku | 2008-04-02 23:10 | 雑想
Captcha の次にくるもの
 結局、Captcha の敗北は、アルゴリズム and/or 演算速度の進化が人間の能力を追い越したということであり。では、そのような問題を抱えない、スパマー防止のための仕組みがあるのか。

 個人的には、スパマー (ないしは悪意あるユーザー) の判定をサービスの運営者からコミュニティに外部化できるケースは結構あるんじゃないか、と思っている。FOAF なんてのはホワイトリスト的発想。逆に Wikipedia における荒らしの排除はブラックリスト的。なぞなぞ認証は、認証の定義をコミュニティに委ねる。

 このあたりを組み合わせたところに、何か答えがあるのかな、という気が漠然としている。個人的にはあまり深追いする気はないけど、現状認識の整理をかねて。

参考:
変形文字「CAPTCHA」はもう無意味? - ITmedia エンタープライズ
Twitter / Toshiyuki Masui: なぞなぞ認証の時代だな http://www.itme...
# by kazuhooku | 2008-02-28 09:30 | 雑想
「グローバルなビジネス展開を」とかいうベンチャーってどうよ
 国内市場じゃ成長が頭打ちだ、というくらいの大企業でない限り、グローバルにビジネスを展開しようとすることにメリットなんてない。それよりは、海外のものを日本市場むけに模倣して売るほうが利得が高いに決まってるじゃん。

 これは企業を個人に置き換えたって同じ話で、海外で仕事をするとしても、真にグローバルな仕事よりは、日本の製品や資金を海外に出す仕事をするか、あるいは海外にいて日本をむいた仕事をするほうが、人材の需要と供給のバランスを考えると有利になるケースが多いはず。梅田望夫さんなんかは、このいい例なんじゃないかな。

 話をベンチャーに戻すと、もちろん日本国内の優秀な人材を集めれば、いきなりグローバル市場で (技術的には) 勝負できると思う。でも、ベンチャーを構成する各個人にとっては、そういう仕事から期待できる利得は、上で書いたように他のモデルの期待値よりも低いわけで、そういう非合理的な選択をする集団には、すぐれた企業経営のセンスは望み薄なんじゃないかと思う。あるいはそういう非合理的な技術者の思いを上手に使える経営者がついていればいいのかもしれないけど、金儲けが好きな人にとっては、非合理的な夢をもつ技術者と組むよりも彼らを食い物にするほうが... (ry

 すでに成功した人が、自己資金で夢を追うのは別にその人の勝手だと思うけど。

参考: 国内ベンチャーの海外進出ってどうなの?:CNET Japan オンラインパネルディスカッション - CNET Japan
# by kazuhooku | 2008-02-27 04:23 | 雑想
初音ミクという権力装置
 弾さんは、

そんなこと禁じる権利は誰にあるのか?
404 Blog Not Found:VOCALOIDはただの道具です

と書いてるけど、「初音ミク」は道具ではなくキャラクターでしょう。道具というのは、たとえば Photoshop のように裏方のものであって、それを使って作りましたなんて公言するものではない。あるいは、それを使って作ったことを売りにするものではない

 VOCALOID の場合は、「初音ミクが歌った曲」というのが売りなんだし、そうである以上、利用形態に制限を設けることは、クリプトンと利用者の双方にとって有益なんじゃないか、というのが少なくともクリプトンの考えなんでしょう。それはひとつの考え方として、とても納得できるものがある。

 ただ、弾さんの論に対して、「契約に合意してるんだからガタガタ言うなよ」的な反論についても、自分は同調できない。そもそもこうした場合において契約者は対等でない場合が多いわけで、そのような場合に何をやってよくて何をやってはいけないか、というのは単純に二者間の問題として解決すべきではないからだ。この点について社会学的な側面から扱った本としては、宮台真司の「権力の予期理論—了解を媒介にした作動形式」を読んだことがあり、面白かった。



 自分の興味はむしろ、初音ミクのようなマーケティング手法が従来からあったものなのか、それとも新しいものなのか、といったあたりにある。B2B2C で言うと「Intel Inside」みたいなものはあったわけで、それがプロシューマレベルに落ちてきたという理解でいいのかな。いろいろ類例を見てみると学べるところがあるんじゃないか。あるいは、こうした契約の非対称性をマーケティングにどう活かすか、という点について解説した本があれば、ぜひ教えてください。
# by kazuhooku | 2008-01-30 09:49 | 雑想